っふぃろらぼ

自己顕示欲を満たす傍ら、ちょっぴり文化興進できたら良いなぁとか夢見るブログ

資料―「サルでも分かる」『ギルガメシュ叙事詩』前編

古代メソポタミアに伝わるギルガメシュ王の伝説が描かれたギルガメシュ叙事詩。その物語を非常に簡略化したものを作りました。勿論その際に厳密さは若干失われている部分がありますが、概観としては差し支えないように配慮しました。

元々は友人に頼まれたものですが、しっかり保存しておきたかったのでここにまとめておきます。

最近ではFateという作品でも広く知られているらしいですね。元々の物語がその作品にどれほど反映されているのかは存じ上げませんが...

 

19世紀半ばにアッシュルバニパルの図書館が発掘され、1872年、G. Smithによってその中にギルガメシュ叙事詩が発見されました。

ギルガメシュ作品群と呼ばれるものは前三千年紀末には成立しており、前二千年紀初頭に『ギルガメシュ叙事詩』の骨子が完成したと考えられています。

今回参考にした標準版が成立したのは前十二世紀頃とされています。

 

イラストも漸次追加していく予定です。

 

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ギルガメシュ叙事詩』或いは『深淵を覗き見し者』

 

 

深淵を覗き見し者について語ろう。

彼は全てを知り尽くし、知を究め、かの伝説の洪水を世に知らしめた。

彼は遥かなる道を歩み、その苦労を石碑に刻み付けた。

彼は都ウルクの城壁に加え、愛と戦の女神イシュタルの神殿を築いた。

ラピスラズリの書板に刻まれた彼の業績を読んでみよ。

彼は名声溢れ、容姿優れた王。勇士にして、ウルクの猛き雄牛。

先頭で仲間を率い、後ろ盾として後方を守る。石の城壁をも砕く怒涛。

伝説の王ルガルバンダと女神ニンスンの一番息子。

勢い全きギルガメシュ。完全無欠の、恐るべきギルガメシュ

彼は世界の果てまで歩き、生命を求め、かの遥かなる男ウトナピシュティムの元へ辿り着いた。

彼と肩を並べる王は一人もいない。

ギルガメシュ、生まれ落ちし日よりこのかた、その名を讃えられる。

 

 

 

ギルガメシュ「ウェーイwwwwww」

 

ギルガメシュは暴れん坊だった。昼夜を問わず武器を振り回して自分の力を見せつけたり、「初夜権」とか言って乙女のハジメテを独り占めしたりしていた。

 

乙女たちウルクの神アヌ、どうにかしてくれ~」

アヌ「よし、創造女神アルルギルガメシュのライバルを作ってくれ。そうすれば彼が持て余している衝動もそっちに向くだろう」

アルル「おk」

 

アルルが粘土をつまんで荒野に投げると、そこに英雄エンキドゥが生まれた。

エンキドゥの髪は麦穂のように長く、体は獣のように頑強だった。

そして彼は動物たちと一緒に暮らした。

 

狩人「うわ...。パパ、なんかヤバげな奴いるんですけど...」

狩人の父「よし、ギルガメシュに相談しなさい」

狩人「なんかめっちゃ強そうな奴いて、仕事できないんすよ...」

ギルガメシュ「よし、聖娼*シャムハトを連れていけ。人間と交わればそいつと動物たちとの絆も弱まるだろう

 

*聖娼とは、神殿つきの神聖な娼婦のこと。

 

狩人シャムハトエンキドゥの元へ連れていき、脱がせ、エンキドゥに見せつけさせた。

エンキドゥは興奮してシャムハトと六日七晩も交わりまくった。

動物たち、ドン引き。

するとたちまちエンキドゥは獣の体力を失い、二足歩行になり、知恵が広がった。

 

シャムハト「いまや貴方は神のように賢くなりました。さ、ウルクへ行きましょう。そこではギルガメシュという王が権力を振りかざしています」

エンキドゥ「なんか友達欲しいし、行くわ。そいつと戦ってみたい」

 

一方その頃ウルクでは――

 

ギルガメシュ「母上、不思議な夢を見たんだ。まず空からアヌが投げたっぽい塊が落ちてきた。それは持ち上げられないくらい重かった。次にウルクの人々が集まって、それの足元に接吻をした。俺はそれを女みたいに抱いて、愛を注いだんだ」

ニンスン(ギルガメシュの母)「それね、心強い仲間がやってくるということでしょう。その者は山で最強の力を持っていて、常にあなたを助けるのです。そしてあなたはその者に愛を注ぐのです」

 

さて、エンキドゥウルクへ向かうとなって、シャムハトは彼に上着を着せた。道中、牧夫の小屋に寄ると、牧夫たちはエンキドゥのたくましさを見て、パンとビールを振る舞ってくれた。

エンキドゥは、最初はためらっていたが、シャムハトに勧められるままにそれらを食し、どんどん人間らしくなっていった。

その後エンキドゥは狼やライオンを駆逐して牧夫たちに恩返しをし、やがてウルクへとたどり着いた。

ウルクの人々は彼の元に集まり、そのたくましさに圧倒されて、彼の足元に接吻した。ちょうどその頃のウルクでは新年祭が行われており、それに合わせて結婚の儀式が執られていた。

 

エンキドゥ「おい、そこの男は何をそんな忙しくしてるんだ」

「結婚の儀式をする家に料理やら飾りやら準備しないとなんです。ギルガメシュ王がまず新婦と寝るので、王への貢ぎ物も用意しないと。夫は二番目ですよ、トホホ。でもこれは決まりきったことなんです」

エンキドゥ「は?クソかよ」

 

その晩エンキドゥはその家の前でギルガメシュ待ち伏せし、彼を足止めして殴り掛かった。熾烈な大乱闘が始まり、敷居は震え、壁が揺れた。

ニンスンの息子ギルガメシュ、荒野の英雄エンキドゥ。殴り合い、掴み合いは果てしなく続けど、決着がつくはずもない。

息も絶え絶え、そのうち二人ともへたり込み、恋人のように抱き合って、互いに手を取り合った。

彼らは友情を結んだのである。

 

 

さて、二人が一緒に食事をしたときのこと。

 

 ギルガメシュ「なぁ、あの香柏の森あんじゃん。あそこのフンババとかいうヌシ、狩ろうと思うんだけど

エンキドゥ「いやムリムリムリ。あいつめちゃくちゃ耳いいし。声は洪水みたいに溢れて、口は火みたいに広がってて、息を嗅いだら死ぬって話だ。あいつに挑んで帰ってきた奴はいない」

ギルガメシュ「いや、行こうよ。俺たちの名を轟かせよう。でっけぇ斧作ってさ。あの木立を伐採しようぜ。なぁ、皆も応援してくれよ」

エンキドゥ「賢者の皆もなんとか言ってくれよ」

賢者たちギルガメシュ、あなたは若いから心がはやっているんだ」

ギルガメシュ「誰が何と言おうと行くさ。俺たちの力を示さなければ。獣の神エンリルフンババを作ったのなら、なおさら打ち負かさなければ。全ての上に立って、俺は正真正銘の王としてウルクに君臨するのだ」*

賢者たち「...そこまでの決意ならば私たちはあなたを祝福するしかないな。ただし、ご自分の力を過信しなさるな。エンキドゥという心強い仲間と協力して行きなさい。自然界については彼の方が詳しいのだから。元々あなたは私たちが会議を通して王として信任したのだ。あなたも私たちの信頼に応えなさい」

ギルガメシュ「サンキュ。そうと決まればエンキドゥ、一緒にエ=ガル=マハ神殿に行って旅の安全を祈ろう」

エンキドゥ「...全く、仕方ないな」

 

*説得の文句が原文不明のため、適当に創作

 

二人はエ=ガル=マハ神殿でニンスンに旅立ちを告げ、ニンスンはそれを太陽神シャマシュに伝えて、息子エンキドゥが再びウルクの土地を踏めることを祈った。

 

 

二人は一日で500kmも進み、通常ならば一ヶ月半ほどかかる道のりもたった三日で歩いた。

レバノン山にたどり着いたところで二人は眠ることにした。ギルガメシュシャマシュに焼き粉を捧げ、夢のお告げが得られるよう山に祈った。エンキドゥは夢見のための寝床をしつらえ、その周りに守護の円を描いてやった。

ギルガメシュは丸まって寝たが、途中で目を覚ました。

 

ギルガメシュ「あれ、起こした?」

エンキドゥ「いや」

ギルガメシュ「変な夢見たわ。山の奥深くに入っていくと、上からさらに山が落ちてきたんだ。でも俺はそれをハエみたいにはたき飛ばしたんだ」

エンキドゥ「おお。すげぇ。その山ってのはフンババのことだろ。俺たちはそれをハエみたいにはたき倒すんだ」

 

翌日からも二人は同じ調子で進み、また同じ手順でもってギルガメシュは夢を見た。

 

ギルガメシュ「今度は一回目より恐ろしい夢だった。上から山が落ちてくるんだけど、そいつは俺を放り投げたんだ。それでそいつが俺の足を掴んだ!ってところであたりが眩しくなって、気付いたら俺の傍に一人の男が立ってた。その男は俺を助けてくれて、水を飲ませて回復させてくれた」

エンキドゥ「確かに変な夢だな。でも怖がることじゃない。その男ってのはシャマシュのことだ。シャマシュが俺たちを守ってくれるんだ」

 

また進んで、また夢を見た。

 

ギルガメシュ「今度は無茶苦茶だったよ。天が叫び、地が吠え、昼が引っ込んで夜闇があたりを覆った。稲妻が走って火が上がったかと思えば、降り注いだ死の雨によってその火は鎮められたんだ」

エンキドゥ「うーん、それはフンババとの戦闘だな。その火ってのがフンババだ。お前の恐れが現れてる。でも最後にはお前がフンババをねじ伏せるのさ。あいつのいくつもある頭をこう、グイっとね。お前にはお父さん、ルガルバンダがついてる。安心しろ」*

 

*標準版に残る夢の報告と古バビロニア版に残る夢の解釈との文脈的なつながりが不明瞭のため、日本語を独自に意訳

 

また。

 

ギルガメシュ「今度は三回目よりはっきりしてた。まず空に、混乱をもたらす獅子頭の鷲アンズーが飛んでた。そいつは俺たちの上空を飛んで、恐ろしい形相で近づいてきた。その口は火みたいに広がってて、そいつの息は死の匂いがした。そのとき一人の若者が現れて、俺の前に立ったんだ。そいつはアンズーの翼を引きちぎって、地面にたたきつけた」

エンキドゥ「そうだな。お前がそいつの形相を恐れたとしても、俺がお前を再び立たせよう。そしてその若者ってのはやっぱりシャマシュのことだ」

 

さて、四つの夢を経て旅を続ける二人であったが、いつものようにシャマシュに祈りを捧げるとき、とうとうギルガメシュフンババへの恐れから、涙を流してシャマシュにすがりついた。

 

シャマシュ「急いだほうがいい。フンババはまだ森に入っていない。奴が森に入って七枚の鎧を身に着ければ勝ち目はない。今はまだ一枚だけだ。急げ」

ギルガメシュ「うわ...頑張ろう...」

 

二人は勢いづいて歩を進めたが、ついに遠くからフンババの雄たけびが聞こえてくると、ギルガメシュは恐怖に包まれてしまった。

 

ギルガメシュf:id:st_lucies:20171009171817j:plain

ギルガメシュ「俺、森に下っていくにしても、入り口を開けるにも腕が萎えちまうよ...」

エンキドゥ「何言ってんだ。俺たちは全ての山を越えて、香柏の木立を切り倒しに行くんだ。でもその前にあいつが現れるだろう。だけどな友よ、お前は戦いを熟知してる。百戦錬磨の強者なんだ。戦いの前にしっかり薬草も塗り込んどけば、お前は死すら恐れる必要はない。さあ、太鼓のように声を上げろ。その声で腕や足の萎縮なんて吹き飛ばせ。

友よ、俺たちは一つになって出かけよう。戦いに心を燃やし、死をものともせず、生をまっとうしよう。」

 

 

一人より二人の方が幸いだ。

一人が倒れても、もう一人が助け出す。

一人は災いだ。倒れても、助け起こしてくれる友もない。

二人で寝れば暖かい。一人でどうして暖まれよう。

二人ならば立ち向かえる。

 

 

彼、エンキドゥこそは、注意深く脇を見張り、前を進み、友の身を守り、友に安らぎを与える者。

彼らは遠く後代まで名を上げるのだ。

 

こうして二人は長い旅の末に、香柏の森へと到着した。

言葉をも奥へと吸い込むような森の入り口に、彼らは立ち尽くした。    (後編へ続く)

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[出典]

月本昭男 訳, ギルガメシュ叙事詩, 岩波書店, 1997